チョイ悪中年ライダーズ 時を越えて~大学編 Vol.9
「チョイ悪中年ライダーズ
時を越えて~大学編 Vol.9」
(――授業編)
入学式から数日後・・
「結構授業があるな・・」
授業は月曜から金曜まで
毎日・・朝から夕方まであった・・
「おっかしーいなー・・文系のやつらは
ほとんど授業に行かないって言っていたのに」
名古屋の文系の連れは授業も行かずに
バイトばかりやっているとの事だったが
「最初ぐらいは出席するきゃー!」
小原田のアパートは学校よりも駅前に近かったが
最初は何とかバスで通学した
「・・うんだからってぇ・・」
「んん・・そうだべ!」
ほっぺの赤い女子高生が
車内でしゃべっている・・
―――(折角の可愛い子ちゃんなのに
こっちの方言は興ざめだがや!)
と心で思いながら学校に通った
講義は退屈で居眠りばかりしていたが・・
「おい・・腹減った飯食いに行くっぺ!」
“坂元”が隣でささやいている
「だって・・授業中だがや」
「もう出席カードが廻って来たから大丈夫だ!」
その隣の“粕淵”がそう言ってうなずいている
(注:先生によっては直接出席を取る場合と出席カードで
出席確認する場合と様々だった)
「次にあのセンコーが黒板に向いたときに出るっぺ」
「分かったがや・・」
と丁度その時・・その小仁多教授は・・
「それでは・・この公式を書いてみる・・」
そう言って黒板に向った
「今だっぺ!」
そして3人は後ろの入り口から消えて行った
「あのセンコーの授業はかったりーぜ」
“粕淵”がから揚げを突っつきながら言った
「人は良さそうなんだけど・・授業は詰まらんっぺ!」
“坂元”もラーメンを啜りながら同調している
「おめーは如何思う?」
自分は講義をあまり聞いてなかったので
面白いかどうかは分からなかったが
「まあまあかな・・」
とカレーを頬張りながら答える・・
「それより そろそろ・・バイトを始めんとやばいがや
どっか知らねーか?」
「おめーーバイトやるんけ!」
「仕送りが無くなってきたがや・・」
「そういえば・・
こいつ・・この前きゅうり一本で飯食ってったっぺ!」
「悪りぃ悪りぃ・・
明日の昼飯奢るから・・勘弁してちょーよ!」
「そういえば・・
駅前のロッテリアに求人の張り紙がしてあったぜ!」
“粕淵”が思い出したように言った
「ロッテリアか・・
そこでバイトすればハンバーガー食べ放題だなや!」
「食い意地の張ったやつだっぺ!」
「時給680円か・・」
ロッテリアの前の張り紙を見て
「何か・・むっちゃんこ安いがや!」
しかし・・他にあてが無かったので・・
「こんにちは・・表の張り紙を見たんですが・・」
そう言って中に入ると・・少々年上の聡明そうな女性が
にっこりと微笑んでいる
「バイト希望ですね・・店長!」
彼女が呼ぶと奥から甘いマスクの青年が出てきた・・
「私が店長の斎羽です・・」
「バイトを希望したいんですが・・」
店長は〝ぎょろり〟と嘗め回すような視線で
上から下へと品定めをして・・
「分かりました・・では明日からお願いできますか?」
「宜しくお願いします」
と言う事でこちらでの初バイトが決まった
次の日・・
「お早うございます!」
店長は意味のありげそうに〝にやっ〟と笑って
「お早う!早速だがハンバーガーの作り方は・・」
店長は手際よくハンバーガーを作る
「そして・・接客は・・」
カウンターへ移動してお客を接待する
「お客様には笑顔で接客します!」
「はあ・・」
次から次へと矢継ぎ早に説明され・・
「君は笑顔が良いね・・」
「有難うございます・・」
「いける口かな?」
コップを煽るしぐさで・・
「ええ・・少々ですが・・」
(注:まだ未成年だったが)
「それでは・・今晩 歓迎会しようか・・」
「歓迎会ですか・・」
「そう・・歓迎会だ!」
「はあ・・分かりました・・」
「それじゃ・・初めはカウンターで接客お願い・・」
と言う事で接客から始める事になった
「いらっしゃいませ・・」
年配女性のお客が来た・・笑顔が引きつる・・
「何にいたしましょうか・・」
「ハンバーガーとコーラ・・」
「はい!分かりましたハンバーガーとコーラですね・・」
そして・・もたもたしながらコーラを紙コップに注ぐ・・
ハンバーガーは幾つかストックしてある・・
その2品をトレイに乗せて・・
「お待たせいたしました・・有難うございます!」
と渡そうとしたが・・
「ちょっとぉ・・持って帰りたいんだけどぉ!」
そのお客は憮然とした態度で言った
「しっ・・しっつれいしたがや!」
あわてて袋に入れようとしたとき
ハンバーガーを床の下に落とした
すぐに拾って中に入れたが・・
店長が飛んできて・・
「大変失礼しました・・新しいのにお取替えします」
てきぱきと包んでお客様に渡した
「有難うございました・・またいらしてください!」
店長は蛇のような目でにやりと笑い・・
「落としたものは君の時給から差っ引きます
またポテト付のセットを勧めなさい・・
少しでも儲けるようにしなくては・・」
その目に睨まれて・・自分は蛙のように縮こまっていた
「あの店長・・顔もいいしやり手なんだけど・・
ちょっと変でしょう・・」
歓迎会で面接の際に会った年上の女性が横に座った
「栄子さんもそう思います・・
失礼だけどなんか目つきが気持ち悪いようだがや!」
「でも・・男の人には優しいのよ!」
「ええーー!!」
「私たちにとても厳しくて・・」
「そうきゃー・・」
「その割りに男性のバイトはすぐ辞めてしまうのよ!」
「・・・」
そして小声になって・・
「噂では男性に迫るって話だわ・・」
「それって・・」
「そう・・ホモセクシャル!」
「ホモォォオ!!」
「しっっ・・横に聞こえるわ!」
その横では店長が他のバイトと話している
「だから・・歓迎会と言っても皆集まらないのよ・・」
参加者は店長と自分と栄子さんと
後は女性が2人だった・・
「だから・・貴方も気をつけてね・・」
そう言った時・・
「何に気を付けるんですか?」
急に店長が怪訝そうな態度でこちらを向いて言った・・
「はいっ!・・接客で嫌な客に会ったときの
心得を教えていましたわ・・」
―――(さすが栄子さんナイスフォロー)
「そうですか・・それでは後は私に任せて下さい」
そう言うと店長の顔が急に近づいて・・
「貴方の趣味は何ですか?」
「趣味ですか・・」
「そうです・・何かありますでしょ・・」
「そうですね・・スポーツかなや・・」
「良いですね・・男の汗は最高ですね!」
―――(やばい!他のものにしなかん・・)
「いやーー!やっぱりバイクかな・・
今は実家に置いてあるけど・・」
「バイク!!貴方・・バイクに乗るのですね・・」
「一応・・ライダーだぎゃー・・」
「バイクですか・・」
「バイクだと何か良くないのかなや・・」
「いやーー別に・・」
店長は急に黙り込んだが・・
「それでは遅くなるのでこれで解散にしましょう・・」
「一人3千円になります!!」
「ええーー!俺の歓迎会で俺からも金取るのきゃー?」
「どんな人間でも平等ですよ!」
「ちぇっっ・・今日のバイト代がパーだぎゃー・・」
そう言いながら3千円を支払う
「それでは・・私は失礼します・・」
店長は闇の中へ消えていった
「あの店長がさっさと帰るなんて・・
君・・何かした・・」
栄子さんに二次会と称してショットバーに
連れてきてもらいカウンターで飲んでいた・・
「そう言えば・・バイクの話になって・・
急に態度が豹変したようだぎゃー・・」
「それだわ・・」
「それって・・」
「たぶん店長はバイクにトラウマがあるのよ!」
「トラウマ?」
「そう!例えば昔・・バイクに轢かれたとか・・」
「ええーーバイクに轢かれたのきゃー!」
「例えばよ!」
「それで・・迫ってこなかったのか・・」
「良かったわね!」
「助かった・・なや・・」
栄子さんはジントニックを追加注文して・・
「ところで君は何処に住んでるの?」
「小原田のアパートですが・・」
「何で通ってるの?」
「バスですが・・」
「バスか・・それで授業には行ってるの?」
「今のところ・・でも移動が大変だなや!
バスも少にゃーし・・」
「君・・バイク乗るって言ったわね・・
知り合いが原付バイク余ってるって言ってたけど」
栄子さんは目を光らせながら言った
「ええ!バイク戴けるのきゃー!」
「タダって訳ではないと思うけど・・格安だと思うわ」
「是非お願いします!」
次の日・・指定された場所に行ってみると
社会人らしいさわやかな青年が待っていて
「こんにちは・・」
と挨拶すると・・
「君があの店長の魔の手から逃れたミラクルボーイか・・
栄子から聞いてるよ・・」
「はあ・・ミラクルボーイですか・・
それで・・バイクは?」
「バイクって言うのはおこがましいけど・・これさ」
その青年は傍らにおいてある物体の
シートカバーをたくし上げると
そこには・・
ホンダが世界に誇るオートバイ
≪ホンダ スーパーカブ50DX≫
が現れた・・
「えーー!古ぼけた“カブ”か・・」
「こらこら・・“カブ”って馬鹿にするんじゃないぜ!」
彼は大げさなゼスチャーで
「これは世界で一番売れているオートバイだ!
燃費はいいし丈夫で壊れないし見てくれは
こんなんだが高性能だぜ!」
と誇らしげに言った
「それに・・オートマだが・・こんな事も出来る」
そう言うと彼はキックでエンジンを掛け
アクセルを開けると
≪ババッバババ・・≫
なんと・・前輪が浮いた・・
そして・・
≪ザザザザッツ・・≫
なんと・・その場でスピンした・・
「ゲゲゲゲッ・・ウィーリーとスピンターンだぎゃー!」
「面白いだろ!」
「めちゃんこすげー・・是非・・教えてください!」
それはギヤーの入れ方とアクセルを開けるタイミングの
ちょっとしたコツで出来た!
そして・・その日のうちにその技をマスターして
「有難うございました・・」
「ところでお幾らでしょうか?」
「栄子の紹介だから千円で良いよ!」
「千円!!」
「栄子が君の事・・
貧乏だけどいい奴だって言ってたからな!」
「有難うございます!!」
「それじゃ・・事故らないようにな!」
そしてオートバイをゲットした
史上最強のバイク、ホンダ『スーパーカブ』
本田技研工業の伝統あるバイク『スーパーカブ』は、内燃機関付きの乗り物の歴史において、類を見ない販売数を記録している。これまでに累計6000万台以上が世界の道路を走っている。
この驚くべき数字は、50年前に本田宗一郎氏が設計した49ccバイクの強さを物語っている。日本が後にバイク産業を支配するようになったのも、スーパーカブの登場がきっかけだ。
スーパーカブはそれほど速くもないし、外見もさほど格好がいいわけではない。しかし、基本的な輸送手段にとって必要なものがすべてそろっている。安くて効率的、しかもほぼ不死身だ。
バイクのエンジンは2ストロークが主流だった1958年、ホンダは画期的な4ストロークのスーパーカブを発売した。シートの前をまたいで乗れるデザインと、大きなタイヤを採用し、クラッチ操作を不要にしたおかげで、誰でも簡単に乗ることができた。
最近になって電子制御の燃料噴射システムを採用するなど、機構の改良は絶えず行なっており、排気量の大きな車種を異なる名前で出すこともある。しかし、その外見は年月を経てもあまり変化しておらず、燃費も依然としてリットル当たり60キロメートルを上まわっている。スーパーカブは働き者だ。アジアの都市では、荷物や人をいっぱいに積んで走る姿がよく見られる。米国でも新車が約1400ドルと手ごろな価格で手に入り、世界160カ国で乗られている。
それからは・・そのカブは東へ西へと大活躍した
そして・・ある日・・
「坂元・・授業抜けて・・飯食い行こまいか!」
「そりゃ・・ええっぺ!」
そして例の小仁多教授が黒板へ向いたとき
2人は後ろの入り口から消えていった
「そー言えば“坂元”はこのカブの技って知ってるきゃー」
学食に行く校内のメインストリートでカブを押しながら・・
「ワザ!」
「そう・・ワザだ!」
そう言うと・・俺はキックでエンジンを掛け
アクセルを開けると
≪ババッバババ・・≫
前輪が浮いた・・
そして・・
≪ザザザザッツ・・≫
その場でスピンした・・
「凄いっぺ!」
「だろ!」
周りの学生がこちらを見て指差している
「もう一度やってみせるっぺ!」
そして俺はカブで演舞して見せた
≪ターン・ターン・ウィーリー・ターン・ウィーリー≫
―――(練習の成果が出たぜ♪)と思いながら演舞する
そして・・周りは人だかりが出来て
「いいぞ・・いいぞ・・」
「ピュー・・ピュー・・」
観客からの声援もあり・・
お調子者の俺は調子に乗って
「有難うございます!!」
左手を上げて演舞する
その時・・
「こらーー!何やっているんだ!!」
土木科で一番厳しいといわれている田之上教授が
真っ赤になって怒鳴っている
観客は皆いっせいにあちこちへ散らばって行った
俺もカブで逃げようとしたとき・・
後ろから〝ニュッ〟と手が伸びてきて
カブのキーを抜いていった
「しまった!!」
「観念しろ!」
「・・・」
そして・・その田之上教授の部屋に連れて行かれ
「今の時間・・講義は有ったのか・・」
「はあ・・小仁多先生の選択の授業ですが・・」
「小仁多教授は大人しいから・・学生に舐められるんだ」
「・・・」
「こんな事・・前代未聞だ!」
その後1時間ほど小言を言われ・・開放された
「それじゃ・・今後はしっかり勉強しなさい!」
「すみませんでした・・」
とぼとぼと学食に行くと
“坂元”“おちん”“ヒロトモ”“粕淵”が駄弁っていた
「おおぉーーーい・・大変だったな」
“ヒロトモ”から声をかけられる
「俺・・あの授業の単位は取れんかもしれん・・」
「まあ・・ええじゃねえか・・選択授業だし
他の単位を取って頑張れば・・」
“おちん”がフォローするが・・
「あんなとこで田之上が来るなんて運が悪いぎゃー」
「お調子に乗るからだっぺ!」
“坂元”は悪態をついた
「そういえば・・ロッテリアでバイトしてるんか!」
“粕淵”が話題を変えた
「そうなんだ・・その店長がホモで・・
この前やばかったけど・・
バイクが嫌いで助かったがや!」
「ホモ?」
「何人も毒牙に掛かっているらしいがや!」
「それで・・ハンバーガー食べ放題なら
俺たちにも奢ってくれよ!」
“ヒロトモ”が物欲しそうに言った
「それが・・食べ放題じゃないがね・・
一日1個しか食べれんがや!」
「そりゃーせこいぃいっぺ!」
「だろ!あの店長が悪いがや!一度お仕置きしなかん!」
「でも何かやったらバイトは首だぜ」
「そうだな・・今日も事件を起こしてまったから
しばらく大人しくしとらなあかんぎゃー!」
「そうそう・・真面目にやらなくっちゃ!」
“おちん”が神妙な顔で言った
「栄子さん・・有難うございました!」
学食で昼食を食べた後・・バイトに入った
「それでバイクはいくらだったの?」
「それが授業料込みで格安の千円だぎゃー!」
「授業料?」
「バイクのワザを伝授していただいたがね・・」
「ワザ?」
「それが・・さっきそのワザを披露しとったら
怖い先生に捕まってまって往生こいたがや!」
「・・・」
「栄子さん・・またあの方と会います?
会ったら宜しく言っておいて欲しいがね・・」
「今晩・・会うから言っておくわ!」
「もしかして・・栄子さんのいい人ですか?」
と右手の小指を上に向けて言った
「もう・・やーーねーー!」
バシンと肩を叩かれた・・
栄子さんを見ると頬がほんのりと赤く染まっていた
―――(ちょっとがっかりしたぎゃー)と思ったとき
「貴方・・ちょっと打ち合わせしますから
控え室に来てください」
店長が中から手招きしている
「はぁーー」
控え室に入ると店長が満面の笑みを浮かべて
「貴方・・バイクに乗ってるって言ってたですね・・」
「はーー」
「私・・バイクは嫌いです・・」
「はーー」
「どうして嫌いか分かります?」
「いえ・・」
「実は・・昔付き合っていた彼女がライダーで
後ろに乗っていたときに振り落とされました」
「ええーー!落ちたのですか・・」
「そして・・そのまま彼女は行ってしまったのです」
店長は遠くを見ながらそう言った
「気がつかなかったのですね・・それでお怪我は」
「幸い軽い打撲だけですみました・・
しかしそれ以来バイクは嫌いになってしまいました」
そして店長は下を向いて・・
「そして私は女性不信に陥ってしまいました・・」
「それでホモに・・」
「ちょっと待ってください・・誰がホモなんですか?」
「いやーー!噂じゃー店長はホモだって・・」
「私は可愛い男性は嫌いじゃありませんが・・
男性と愛し合うなんていう趣味はありません・・」
「そうですか・・ガセネタきゃー!」
「それで・・貴方に頼みがあります・・
もう一度バイクにチャレンジしようと
思っているのですが・・」
「チャレンジ?」
「実は・・好きな女性が出来ました!
でも・・どうしてもその時のことが引っかかって
それ以上進展しないのです・・」
「それで・・」
「一度貴方のバイクの後ろに乗せて欲しいのです!」
―――(ええーーホモを後ろに・・気持ち悪りーーがや)
と思ったが
―――(そういえば・・ホモ疑惑は晴れたか・・)
と譲歩して
「分かりました・・それではお引き受けするがね!」
「有り難うございます!」
「それで・・何時乗るのきゃー?」
「思い立った時が吉日です・・
今日・・店が終わったときに行ないましょう」
「了解だがね!」
「ええーーこれがバイクですか・・」
店長はスーパーカブを見て言った
「いやーーもっと大きなバイクも持っとるけど
家に置いてまっとるがね・・」
「元カノとは全然違う・・」
「これを馬鹿にしてかんがね!」
そう言うと・・俺はキックでエンジンを掛け
アクセルを開けると
≪ババッバババ・・≫
前輪が浮いた・・
そして・・
≪ザザザザッツ・・≫
その場でスピンした・・
「凄い!」
そしてその応用編の演舞をした・・
≪ターン・ウィーリー・ターン・ターン・ウィーリー≫
「ええーー!こんなことが出来るのですね!」
「さーー!この荷台に乗りゃー!」
荷台には座布団がしいてあった・・
店長がその上に乗った・・
両腕が後ろから廻ってくる・・
店長の体が後ろに張り付いたとき・・
ちょっと〝ぞっ〟としたが・・気を取り直して
「行きますよ!」
「はい!お願いします!」
アクセルを煽って発進する・・
店長の手に力が入るのが分かる
夕方の人通りのあるメインストリートをゆっくり走る
その後・・
信号を左折する・・ちょっとだけ体を傾ける
店長も一緒に傾ける・・
信号を右折する・・さっきよりもっと傾ける
店長も一緒に傾ける・・
調子が出てきた・・
クランクコーナーに差し掛かった・・
右~左に軽快に抜けていく
こんなバイクでもコーナーを駆け抜けるのは楽しい
そんなことを思いながら走った!!
~~~~~
「如何でした?」
店の裏口に着いて・・バイクを降りる
「元カノのとは迫力もスピードも違うけど
楽しかったよ・・」
「ちなみに元カノは何に乗っていたんですか・・」
「なんか・・ハーレーとか言ってましたが・・」
「ハ・ハーレー!う・うらやましいぎゃー!!」
「なんかスッキリしました・・
これで彼女に告白できます!」
「そうですか・・それは良かったです」
そう言うと店長は暗闇に消えていった・・
数日後・・バイト先で・・
「ちょっと・・こちらに来てください!」
店長が控え室から手招きしている・・
中に入ると・・
「実は・・」
店長は力なく言葉を発した・・
「栄子さんに振られました・・」
「ええーー!!店長の好きな女性って
栄子さんだったのキャー!!」
―――(あんな良い彼がいるんだで無理だがや!)
と心で思ったが・・
「それで・・もう私はこの店に居られません・・」
店長はがっくりと肩を落として・・
「職安へ行って・・職探しをしました・・」
「良いところはあったのキャー?」
「ここよりもっと条件の良い会社があり
そこに行くことにしました・・」
「そうですか・・」
「貴方にはいろいろお世話になりました・・」
「いえぇぇーーこちらこそ・・」
「今日で最後です・・」
「それは急だギャー・・」
「こういう時は早いほうが良いのです!」
「そうですか・・」
「それでは私はこれで失礼いたします」
「元気で頑張って欲しいなや!」
「さようなら!」
そして店長はロッテリアを去っていった・・
「・・というわけなんだぎゃー」
学食で“坂元”“おちん”“ヒロトモ”“粕淵”
と一緒に駄弁っていた
「そうか・・それは残念だったなーー」
と“おちん”がから揚げを突っつきながら言った
「でも・・それはしょがねーーっぺ!」
“坂元”も味噌ラーメンを啜りながら悪態をついている
「それより・・栄子さんは美人だったか?」
と“ヒロトモ”がカツサンドを頬張って言った
「美人というより賢そうで落ち着いた感じかなや!」
と俺は蕎麦を啜りながら言った
「そういえば・・“竹之内”が駅前のミスタードーナツで
バイトしてるんだけど・・
結構良い時給もらってるって言ってたぞ」
“粕淵”がコロッケにソースを掛けながら言った
「いくらだぎゃー?」
「夜で千円って言ってたぜ!」
「せ・せんえん!!」
「そりゃー変わるきゃないぜ!」
「ほりゃーーええぎゃーー!!」
その夜・・
「こんばんは・・バイト希望なんですが!」
ミスド(ミスタードーナツの略)の自動ドアを
くぐって言った
「あれ!竹之内だがや!」
「いらっしゃい!」
「いやーー!バイト希望だがや!
それで本当に時給千円くれるんきゃー!」
「そのかわり・・朝までですよ・・」
「千円なら8時間働いて8千円だぎゃー♪」
「・・・」
「それじゃ・・店長がいますから呼んできます」
“竹之内”は奥に引っ込んで・・
「バイト希望というのは貴方ですか!」
甘いマスクの青年が出てきて・・
「私が店長の斎羽です・・」
「ええーーー!店長??!」
「実は条件の良いのはミスドだったのです!」
「・・・」
「それでは・・また宜しくお願いいたします!」
「・・・」
その後・・結局ミスドで斎羽店長にこき使われ・・
苦労しながらバイトに励んだ・・
結局・・その年 小仁多先生の選択の授業は落とされたが
次の年にしつこく受けて 何とか単位を取った・・
PS この物語はドキュメンタリーではなく
作者が勝手に執筆したものです。
よって登場人物や出来事・言動など
事実と相違いたしますのでご了承下さい。
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